債務整理方法の選択
方法の選択に必要な調査
債務整理方法は、破産(自己破産)、個人民事再生(個人再生)、特定調停、任意整理の4種類があります。それぞれの方法には特徴がありますので、各人の個別具体的な事情を考慮して、最適な方法を選択することが重要です。
最適な方法を選択するためには、下記3点の調査を行う必要があります。
- 債務の調査
- 収入・生活費の調査
- 財産の調査
これらの調査結果と、ご本人の意向などを総合的に考慮したうえで、方針を決定します。
債務の調査
取引履歴の開示請求
債務整理をする場合、正確な残存債務額を把握しなければなりませんが、消費者金融(サラ金)などからのキャッシング・ローンについては、督促状に記載の請求額が判明するだけでは不十分です。いわゆる「グレーゾーン金利」を見直し、適正利率による取引の再計算を行うためです。従って、ご自身が保管する書類により取引履歴が判明する場合を別として、債権者に対して取引履歴の開示を請求する必要があります。
司法書士・弁護士に債務整理の依頼をした場合、「受任通知(介入通知)」を債権者に送付し、取引履歴の開示を受けます。なお、貸金業者が受任通知を受け取ることにより、債務者に対する取立て・督促行為が法律上規制されます(貸金業21六)。専門家に依頼する場合の、非常に大きなメリットのひとつです。
適正利率による取引の再計算
消費者金融(サラ金)などの高利貸しは、平成22年6月17日まで、キャッシング・ローンの金利を、26~29%くらいに設定していました。しかし、このような高金利を設定することは違法です。実際には、下記表のとおり、債権額に応じて15~20%の範囲で設定しなければなりません。
| 債権額 | 上限利率(年利) |
|---|---|
| 10万円未満 | 20% |
| 10万円以上100万円未満 | 18% |
| 100万円以上 | 15% |
このため、債権者との取引履歴を調査し、その取引について利息制限法による上限利率で引き直して計算する必要があります。具体的には、利息制限法の上限利率を超過する部分を、その発生の都度、元本の支払に充当したものとして計算します(利息制限法1II・4II、最判S39.11.18)。
取引期間が長いほど、債務の減額幅は大きくなります。場合によっては、債務が消滅したにもかかわらず返済し続け、「過払金」が発生していることもあります。この場合、元債権者に対して過払金の返還を請求していくことになります。過払金の返還請求については、当サイト任意整理・過払金返還請求 - 過払金返還請求をご覧下さい。
取引の再計算の具体例
A社から50万円を年利29.2%で借りた場合に、月々15,000円の返済を3年間続けたときは、最終の取引時点で残存債務は340,010円となります。
- 再計算前(3年).pdf (63KB)
適正利率により取引を再計算すると、残存債務は145,560円となります(194,450円の減額)。
- 再計算後(3年).pdf (65KB)
残存債務総額の把握
上記の調査により、本来の残存債務額が判明します。債務整理方法を選択する際には、各債権者に対する本来の残存債務を合計した額(残存債務総額)を基準とします。なお、ここでは「住宅ローン」は生活費として考えるため、計算から外します。以下、残存債務総額を「Y」と称します。
- 残存債務総額(Y)=本来の残存債務額の合計(住宅ローン除く)
収入・生活費の調査
返済原資を把握するため、収入と生活費の調査をします。返済原資の計算方法は、月収手取り額から必要な生活費(家賃・食費・水道費・光熱費など)を減じた額(余剰資金)です。なお、ここでは「住宅ローン」を生活費と考えます。この計算により、「1ヶ月あたりの返済原資」が判明します。以下、1ヶ月あたりの返済原資を「X」と称します。
- 1ヶ月あたりの返済原資(X)=月収手取り額-(生活費+住宅ローン月額)
債務整理方法の選択基準
上記した債務の調査と収入・生活費の調査をすることにより、次の数式が求められます。
- 1ヶ月あたりの返済原資(X)=月収手取り額-(生活費+住宅ローン月額)
- 残存債務総額(Y)=本来の残存債務額の合計(住宅ローン除く)
求めたXとYについて、下記計算をすることにより、債務整理方法の選択の基準となります。
| 計算式 | 具体的説明 | 最適な方法 |
|---|---|---|
| Y≦36X | 残債の返済が充分可能である場合 | 任意整理 |
| Y>36X | 返済が不可能である場合(支払不能) | 自己破産 |
| Y-α≦36X (Y≦5,000万円) |
残債を縮小すれば、返済が可能である場合 (残存債務総額5,000万円以下) |
個人再生 |
上記表中の「36」という数字は、「3年間(36ヶ月)」を意味します。個人再生による場合、返済期間が原則3年間であること、任意整理による場合も、最長3年の返済期間を目途としているためです。このため、3年分の返済原資と残存債務総額を比較することになります。
3年分の返済原資で残存債務総額の返済が不可能である場合は、自己破産を選択することがベストです。しかし、自己所有の居住用不動産を手放したくないなど、自己破産することに支障がある場合、個人再生の利用を考えることになります。詳しくは、当サイト破産(自己破産) - 自己破産か個人再生かをご覧下さい。
財産の調査
債務整理を行う場合、所有財産を把握する必要があります。自己破産や個人再生を選択する場合は、財産状況が各手続に大きく影響するからです。また、処分が容易な財産を換金して返済に充てることで、任意整理が可能になることも考えられます。
財産の状況と自己破産手続
自己破産をする場合、破産管財人が、生活必需品を除いた全財産を処分・換金し、債権者に平等に分配することになります。しかし、破産者の財産を処分しても手続費用さえ捻出できない場合は、処分・分配手続は行われません。破産手続開始と同時にその後の手続が廃止されるので、「破産手続同時廃止」といいます。すなわち、破産者の財産状況を基準として、「同時廃止事件」となるか「破産管財事件」となるかが決定します。
同時廃止事件の場合は、申立ての際に裁判所に納める予納金が低額(1万円程度)で済み、手続も迅速に終了します。破産管財事件の場合は、高額の予納金が必要となり(40万円以上)、手続にも時間がかかります。
破産手続同時廃止と破産管財手続との中間にあたる「少額管財」という手続があります。予納金などの費用が20万円程度で、通常の管財事件よりも低額で済みます。この少額管財が行われるのは、弁護士が申立代理人となった場合に限られます。
財産の状況と個人再生手続
個人再生を利用することにより、残存債務総額を大幅に減額することができますが、実際の減額可能額は、下記の条件によって決定されます。
- 残存債務を基準に算出される「最低弁済基準」
- 所有財産を処分した場合に見込まれる「清算価値」
- 収入を基準に算出される「可処分所得」(給与所得者等再生のみ)
上記の各条件により算出された最高額が、最低限弁済しなければいけない金額になります。例えば、清算価値(所有財産額)が300万円、他の条件による算出金額が100万円であれば、「300万円」が最低弁済額となります。従って、相続した不動産などの高額な財産を所有する場合は、残債縮小額が少ないこともあるので、個人再生を選択する際には細心の注意が必要です。

