債務整理方法の選択

イントロダクション

方法の選択に必要な調査

最適な債務整理方法を選択するための調査に関する説明

債務の調査

債務を適正利率で引き直し、本来の残債を把握する方法の説明
取引履歴開示請求・再計算・残債把握・その具体例について

収入・生活費の調査

返済原資を把握するための収入・生活費の調査に関する説明

債務整理方法の選択基準

調査により判明する最適な債務整理方法に関する説明

財産の調査

財産状況と裁判所利用による債務整理との関係に関する説明
財産の状況と自己破産手続・個人再生手続について

債務整理・過払金返還のご依頼・ご相談

債務整理・過払金返還請求のご依頼・ご相談は、当コンテンツの債務整理のご依頼・ご相談をご覧下さい。

方法の選択に必要な調査

債務整理方法は、破産手続(自己破産手続)、個人民事再生手続(個人再生手続)、特定調停手続、任意整理の4種類があります。それぞれ特徴がありますので、ご本人の個別具体的な事情を考慮し、最適な方法を選択することが重要です。

最適な方法を選択するためには、下記3点の調査を行う必要があります。

  1. 債務の調査
  2. 収入・生活費の調査
  3. 財産の調査

これらの調査結果と、ご本人の意向などを総合的に考慮し、方針を決定します。

債務の調査

取引履歴の開示請求

債務整理をする場合、正確な残存債務額を把握しなければなりませんが、消費者金融(サラ金などからのキャッシング・ローンについては、督促状に記載された請求額がわかるだけでは不十分です。いわゆる「グレーゾーン金利」を見直し、適正利率による取引の再計算をするためです。よって、ご自身が保管する書類により取引履歴が判明する場合を別として、債権者に対し取引履歴の開示を請求する必要があります。

司法書士・弁護士に債務整理を依頼した場合、「受任通知(介入通知)」を債権者に送付し、取引履歴の開示を受けます。なお、貸金業者は受任通知を受け取ることにより、債務者に対する取立て・督促行為が法律上規制されます貸金業21六。専門家に依頼する場合の大きなメリットのひとつです。

適正利率による取引の再計算

消費者金融(サラ金業者)などの高利貸しは、平成22年6月17日までは、ローン・キャッシングの金利を26~29%位に設定して貸し付けていました。しかし、このような高金利を設定することは違法でした。実際には、次表のとおり、債権額に応じて15~20%の範囲で設定する必要がありました。

利息制限法による上限利率
債権額上限利率(年利)
10万円未満20%
10万円以上100万円未満18%
100万円以上15%

このため、債権者との取引履歴を調査し、その取引につき利息制限法による上限利率で引き直す再計算が必要となります。具体的には、利息制限法の上限利率を超過する部分を、その発生の都度、元本の支払に充当したものとして計算します利息制限法1II・4II最判S39.11.18)

取引期間が長いほど、債務の減額幅は大きくなります。場合により、債務が消滅したのにも関わらず返済し続け、「過払金」が発生していることもあります。この場合、元債権者に対して過払金の返還を請求していくことになります。過払金の返還請求については、任意整理・過払金返還請求 - 過払金返還請求をご覧下さい。

取引の再計算の具体例

A社から50万円を年利29.2%で借り、月々15,000円の返済を3年続けた場合、最終の取引時点で残存債務は340,010円となります。

適正利率で再計算すると、残存債務は145,560円です(194,450円の減額)。

残存債務総額の把握

上記の調査により、本来の残存債務額が判明します。債務整理方法を選択する際は、各債権者に対する本来の残存債務の合計額(残存債務総額)を基準とします。なお、ここでは「住宅ローン」は生活費として考えるため、計算から外します。以下、残存債務総額を「Y」と称します。

  • 残存債務総額(Y)=本来の残存債務額の合計(住宅ローン除く)

収入・生活費の調査

返済原資を把握するため、収入と生活費を調査します。返済原資の計算方法は、手取月収から必要な生活費(家賃・食費・水道費・光熱費・住宅ローンなど)を減じた額(余剰資金)です。この計算で「1ヶ月あたりの返済原資」を求めます。以下、1ヶ月あたりの返済原資を「X」と称します。

  • 1ヶ月の返済原資(X)=月収手取額-(生活費+住宅ローン月額)

債務整理方法の選択基準

上記の債務の調査収入・生活費の調査により、次の数式が求められます。

  • 1ヶ月の返済原資(X)=月収手取額-(生活費+住宅ローン月額)
  • 残存債務総額(Y)=本来の残存債務額の合計(住宅ローン除く)

上記X・Yを下記計算式に当てはめ、債務整理方法の選択をします。

債務整理方法の選択基準
計算式具体的説明最適な方法
Y≦36X残債の返済が充分可能任意整理
Y>36X返済が不可能(支払不能)自己破産
Y-α≦36X
(Y≦5,000万円)
残債を縮小すれば返済可能
(残存債務総額5,000万円以下)
個人再生

上記表中の「36」という数字は、「3年間(36ヶ月)」を意味します。個人再生では返済期間が原則3年間とされていること、任意整理による場合も最長3年の返済期間を目途としているためです。このため、3年分の返済原資残存債務総額を比較します。

3年分の返済原資で残存債務総額の返済が不可能の場合は、自己破産を選択することがベストです。しかし、自己所有の居住用不動産を手放したくないなど、自己破産することに支障がある場合、個人再生の利用を考えることになります。詳細については、破産(自己破産) - 自己破産か個人再生かをご覧下さい。

財産の調査

債務整理を行う場合は、所有財産も把握する必要があります。自己破産や個人再生を選択する場合、財産の状況が各手続に大きく影響するからです。また、処分が容易な財産を換金して返済に充てれば、任意整理が可能になることも考えられます。

財産の状況と自己破産手続

自己破産をした場合は、破産管財人が生活必需品を除いた全財産を処分・換金して、債権者に平等に分配していきます。しかし、破産者の財産を処分しても手続費用さえ捻出できない場合、処分・換金・分配手続は行われません。破産手続の開始と同時にその後の手続が廃止されるので「破産手続同時廃止」といいます。すなわち、破産者の財産状況を基に、「同時廃止事件」か「破産管財事件」かが決定されます。

同時廃止事件の場合、申立て時に裁判所に納める予納金が低額(1万円程度)で済み、手続も迅速に終了します。破産管財事件の場合は高額の予納金が必要となり(40万円以上)、手続にも時間がかかります。

破産手続同時廃止と破産管財手続との中間に該当する、「少額管財」という手続があります。予納金などの費用が20万円程度で、通常の破産管財手続より低額です。この少額管財が行われるのは、弁護士が申立代理人となった場合に限られます。

財産の状況と個人再生手続

個人再生の利用により残存債務総額を大幅に減額することができますが、実際の減額可能額は、次の条件によって決定されます。

  1. 残存債務を基準に算出される「最低弁済基準」
  2. 所有財産を処分した場合に見込まれる「清算価値
  3. 収入を基準に算出される「可処分所得」(給与所得者等再生のみ)

上記各条件によって算出された「最高額」が、最低限弁済しなければいけない金額になります。例えば、清算価値(所有財産額)が300万円、他の条件による算出金額が100万円であれば、「300万円」が最低弁済額です。したがって、相続した不動産など高額な財産を所有する場合は、残債縮小額が少ないこともあるので、個人再生を選択する際には細心の注意が必要です。

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