破産(自己破産)
イントロダクション
- 自己破産の概要
自己破産の手続の流れに関する説明
破産開始・同時廃止・免責許可について- 自己破産のデメリット
自己破産のメリット・デメリットに関する説明
生活上の制限・自己破産に対する誤解について- 免責許可の要件・効果
免責が許可される要件に関する説明
免責不許可事由・非免責債権について- 自己破産か個人再生か
自己破産と個人再生の違いと選択方法に関する説明
自己破産に支障がある場合と支障回避のための個人再生について
破産(自己破産)のご依頼・ご相談
破産(自己破産)のご依頼・ご相談は、当コンテンツの債務整理のご依頼・ご相談をご覧下さい。
自己破産の概要
「破産(自己破産)」とは、債務者が支払不能となった場合、債務者の財産を処分・換金して債権者に公平に分配する手続です。地方裁判所への申立てにより手続が開始します。債務者自ら破産を申立てることを、一般に「自己破産」と言います。
破産手続が開始されると、債務者は「破産者」となります。
破産手続開始・破産手続同時廃止
破産者が財産を所有する場合には、破産手続において「破産管財人」が選任されて、その管理・処分などを行います。
破産者の財産を処分しても破産手続費用さえ捻出できない場合は、処分・換金・分配手続は行われません。破産手続の開始と同時にその後の手続が廃止されるので「破産手続同時廃止」といいます。なお、自己破産の圧倒的多数は破産者に見るべき財産がないため、破産手続同時廃止となります。
免責許可
自己破産しても分配額が足りない場合や破産手続同時廃止の場合は、債権者に支払うべき債務が残ります。この場合には、裁判所から「免責許可」を受けることで、その支払い義務を免れることができます。
免責許可を受けた時点で「破産者」ではなくなります。破産手続同時廃止の場合、「破産者」である期間は、平均すると2~3ヶ月しかありません。
まとめ
一般に、個人の方は、破産後に免責許可を受けることにより、借金の支払いから解放され、生活の再建をすることができます。
自己破産のデメリット
メリット |
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デメリット |
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生活上の制限
上記の表に挙げた「生活上の制限」には、以下のものがあります。
- 公私の資格制限(弁7、民653II、保279など)
- 弁護士や司法書士などの資格を失うことになったり、会社役員の資格を失います。また、保険外交員や銀行員・警備員などの現在の職業が金銭管理に関わる場合、業務を制限される場合があります。破産した場合の不利益を事前に知っておく必要があります。
- 居住の制限(破37)
- 裁判所の許可がなければ、申立時の居住地から転住したり、長期旅行をすることができなくなります。
- その他(破38~41)
上記生活上の制限を受けるのは「破産者」のみです。免責許可を受ければ、これらの制限は解除されます(復権)。破産手続同時廃止の場合、生活上の制限がされるのは 2~3ヶ月だけです。
自己破産に対する誤解
自己破産のデメリットは、上記に挙げたものだけです。自己破産したからといって、次のような不利益を受けることはありません。
- 一般の人や勤務先に知られることは、ほとんどありません。
- 自己破産をすると「官報」に掲載されますが、一般の人や普通の会社が官報を見ることは、まずありません。
- 勤務先に自己破産したことが知られても、退職の必要はありません。
- 自己破産した事実を理由にする解雇は、法的に許されません。
- 公私の資格制限により、職を失う可能性はあります。
- 賃貸人から、アパートや借地の明け渡しを求められません。
- 契約書上「賃借人が破産した場合は賃貸人は賃貸借契約を解除できる」旨の条項があっても、その条項は無効です(最判S43.11.21)。
- ただし、賃料不払いにより契約を解除されることはあります。
- 家財道具などの生活必需品を差し押さえられることはありません。
- サラ金(消費者金融)業者などは自宅に押しかけません。
- 破産しても、戸籍や住民票に記載されません。
- 選挙権などの公民権が奪われることはありません。
免責許可の要件・効果
自己破産をする場合には、「免責許可を受けられるかどうか」が重要です。免責許可がなければ、支払義務がそのまま残ってしまうからです。
自己破産に至る原因や行為などが反社会的で悪質な場合は、免責許可を受けることができません。このような原因・行為などのことを「免責不許可事由」と言います。
また、免責許可を得られても、政策上の理由や被害者保護の観点から、免責されないものがあります。これを「非免責債権」と言います。
破産者が免責許可を受けても、破産者以外の方(連帯債務者や保証人・物上保証人など)の支払義務は免責されません(破253II)。
免責不許可事由
主な免責不許可事由は、次のとおりです(破252I)。
- 破産手続によって処分・換金・分配されるべき財産について、隠匿や損壊などをした場合
- 浪費やギャンブルによって、著しく財産を減少させた場合
- 裁判所に虚偽の債権者名簿を提出した場合
- 裁判所が行う調査について説明を拒んだり虚偽の説明をした場合
- 過去7年以内に、破産して免責された場合や給与所得者等再生による再生計画が認可された場合
上記事由が存在するからといって、直ちに免責不許可になるわけではありません。裁判所が事情を考慮して、免責を許可する場合があります(破252II)。
非免責債権
主な非免責債権は、次のとおりです(破253I)。
- 租税などの請求権
- 不法行為(器物損壊・交通事故など)に基づく損害賠償請求権
- 養育費の請求権
- 給料の請求権
- 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権者の請求権
- 罰金などの請求権
自己破産か個人再生か
自己破産に支障がある場合
多重債務者が支払不能になった場合、債務整理の方法として自己破産を選択するのがベストですが、次の場合は問題が発生します。
- 住宅ローンを担保する居住用不動産(住宅・敷地)を手放したくない
- 公私の資格制限により、業務が制限される
- 免責不許可事由が存在する
自己破産すれば、破産者の所有不動産は処分・換金されます。また、公私の資格制限によって業務が制限される方は、失職して収入が途絶えます。免責不許可事由が存在する場合は、免責許可を受けられずに債務が残る可能性があります。
個人再生による支障の回避
このような場合、個人民事再生(個人再生)の利用を考えます。個人再生においては「住宅資金特別条項(住宅ローン特例)」を利用し、居住用不動産を手放すことなく住宅ローン以外の債務を大幅に減額できます。また、自己破産の場合のような公私の資格制限がありません。多重債務に陥った原因や行為も問題とはされないため、免責不許可事由の有無に関係なく個人再生手続を進めることができます。
ただし、個人再生の利用条件には、「収入」や「残存債務総額」などに関する要件があります。無職の場合や残存債務総額が高額となる場合などは、個人再生を利用することができません。
また、個人再生手続後も債務が残りますので、再度支払不能になる可能性がある場合には、選択できません。居住用不動産を手放したくないからと、返済能力を考えずに個人再生に執着すると、かえって事態の悪化を招きます。専門家の意見などを参考にしながら、冷静かつ慎重に、手続を見極めることが重要です。