相続トラブルの現状
イントロダクション
- 相続全体の5%以上が「争族」 !?
データと経験に基づいた争族の発生数
- 相続財産が少なくても「争族」は発生 !?
「分割しにくい財産」に注意
- 家族仲が良くても「争族」は発生 !?
家族仲が良くても安心できない、その理由
相続全体の5%以上が「争族」!?
高齢化社会の進展により年々死亡者は増え続け、最近は120万人を突破しています。
こうして発生する相続のうちの約1%(1.2万件弱)が、共同相続人間において遺産の分割協議がまとまらず、家庭裁判所に調停を申立てています。
司法介入が必要な紛争のうち、裁判所が関与するものは2割程度しかないとの考え方(二割司法)を根拠とすると、調停申立数の4倍は紛争が発生している、といえます。すなわち、相続のうちの約5%(6万件)が司法介入の必要な「争族」となっている、と考えられます。
司法介入の必要はないが相続人間で意見が対立してしまう、ということもあります。これらも含めると、統計に表れない相続トラブルは、毎年相当数発生しています。
実務経験から言わせていただくと、およそ10件に1件(10%)は、何らかの相続トラブルが起こっています。
上記の数字を多いとみるか・少ないとみるかは、人それぞれです。
確実に言えるのは、ひとたび争族が発生すれば、家族の絆に亀裂が入り、嫌な思いをすることです。
自分たちには相続問題は発生しないと考えるべきではなく、将来発生しうる危険と捉え、万全の対策をしておくことをお勧めします。
西暦 | 死亡者数 (A) | 調停申立数 (B) | 調停率 (B/A) |
---|---|---|---|
2007 | 1,108,334 | 10,317 | 0.93% |
2008 | 1,142,407 | 10,860 | 0.95% |
2009 | 1,141,865 | 11,432 | 1.00% |
2010 | 1,197,012 | 11,472 | 0.96% |
2011 | 1,253,463 | 11,724 | 0.94% |
- 司法統計 平成23年度家事審判・調停事件の事件別新受件数第2表
- 厚生労働統計 人口動態調査
相続財産が少なくても「争族」は発生 !?
「ウチは相続財産が少ないから、モメようがない」と考える方がいます。
確かに、相続財産が多ければ多いほど、トラブル発生率が(僅かずつ)上昇します。しかし、相続財産が少ない場合でも、「分割しにくい財産」があるときは別です。
たとえば、主要な相続財産が住居・住宅地しかない場合、次の難問が発生します。
- 誰かが単独取得するのか・それとも共同取得するのか
- 不動産を取得しない相続人に代償金を払うのか(払えるのか)
- それとも土地を物理的に分けて(分筆して)各々が取得するのか
- 土地を分筆する場合、建物をどうするのか など
家族仲が良くても「争族」は発生 !?
「ウチは家族仲が良いから、争族なんて発生しない」と思っていませんか。
故人の生前の家族仲は、アテにはなりません。「仲が悪いよりはマシ」程度に思っておいたほうが無難です。
家族仲が良いと、各相続人が「(自分の希望するよう)家族を説得して解決できる」と思いがちで、かえって難局化するかもしれません。
親子・兄弟姉妹間の関係は、時の流れとともに変化していくものです。特に、結婚や出産、離婚、事業の失敗などが引き金となります。
普段は表立って言わないかもしれませんが、誰にでも金銭欲があり、引くに引けない事情があります。それが「相続」を契機として一気に噴出します。
遺言や生前贈与を活用し、残される家族間に不和を生じさせないよう、相続人全員に配慮することが、ご本人に求められます。