相続トラブルの解決法
イントロダクション
- 相続トラブルが発生した場合
遺産分割に関する相続トラブルに関する説明
- 遺産分割調停・遺産分割審判の概要
家庭裁判所に申し立てる遺産分割調停・審判に関する説明
- 遺産分割調停・遺産分割審判の流れ
調停・審判の申し立てから手続きの終了までを説明
相続トラブルが発生した場合
相続トラブルと一口に言ってもさまざまなケースがありますが、ここでは「遺産分割協議」に関する典型的なトラブルの解決法を解説します。
遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、文字どおり、故人が遺した財産(遺産)を相続人間の話し合いで分け合うことです。この協議は、次の2条件を満たさなければ成立しません。
- 共同相続人全員が協議に参加すること
- 共同相続人全員が合意すること
つまり、1人でも協議に参加しない場合、遺産分割協議は成立しません。
また、1人でも協議内容に反対する場合、遺産分割協議は成立しません。
したがって、共同相続人間で折り合いがつかない場合だけではなく、共同相続人の一部に行方不明者や重度の認知症患者がいる場合も協議ができません。これらの相続問題が発生した場合、裁判所の手続を利用することになります。
共同相続人間で折り合いがつかない場合の解決法
共同相続人間で折り合いがつかずに争族状態となって遺産分割協議ができない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」または「遺産分割審判」を申し立てることができます。
遺産分割調停・遺産分割審判の概要
共同相続人間で折り合いがつかずに争族状態となって遺産分割協議ができない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」または「遺産分割審判」を申し立てて遺産分割をすることができます。ここでは、両手続の概要と相違を解説します。
両手続ともに、訴訟と異なり、一般公開されません。
遺産分割調停
遺産分割調停とは、裁判所を介して話し合いの場を設け、共同相続人同士の合意を目指す手続です。裁判官や調停委員が当事者の意見を聴き、必要があれば事実も調べたうえで歩み寄りを促して、実情に即した解決を図ります。具体的には、故人への貢献度や職業・年令など考慮し、各相続人が納得できるよう話し合いを進めてくれます。
遺産分割調停のメリットは、次のとおりです。
- 法律を基本としながらも、その制約に捉われず、実情に即した解決
- 遺産分割審判よりも手続簡単・費用低額
- 合意の内容を記載した調停調書に基づいて強制執行もできる
遺産分割調停でも合意に至らない場合、遺産分割審判に移行して、結論を出すことになります。
なお、遺産分割調停の20%が合意に至らず、遺産分割審判に移行します。
遺産分割審判
遺産分割審判とは、相続人からの提出書類や家庭裁判所調査官の調査結果などの資料に基づき、裁判官が遺産分割方法を判断・決定する手続です。具体的には、相続人に遺産に関する資料を提出させて遺産の範囲を確定し、調査官や裁判所選任の鑑定人が鑑定評価を行うなどして遺産の総額を確定、その後各相続人の法定相続分に基づいて分配します。
審判確定後、審判書に基づいて強制執行をすることができます。
遺産分割調停との違いは、次のとおりです。
- 法律に従い、厳格に判断・決定される(柔軟性に欠ける)
- 遺産分割調停よりも手続複雑・費用が掛る
- 結論が必ず出る
裁判官の判断により、調停に移行する場合があります。
遺産分割調停・遺産分割審判の流れ
調停・審判のどちらを先に申し立てるべきか
法律上、遺産分割調停・遺産分割審判のどちらを先に申し立ててもよいことになっていますが、一般的には調停が先行されます。
審判を先行しても、裁判官の判断で調停に移行する場合が多いのが現状です。
手続の流れ
調停・審判ともに、1~2か月に1回の頻度で期日が設定され、裁判所に出頭します。
調停・審判の両手続を通し、1年以内・期日10回以下で終了するケースが過半数を占めます(平成24年度司法統計年報第47表)。
調停・審判手続の代理人
調停・審判手続は、弁護士に代理させることができます。
遺産分割調停・遺産分割審判手続の1.54件に1件(約65%)に、弁護士が代理人として関与しています(平成24年度司法統計年報第45表)。