総会開催に関するトラブル
イントロダクション
- 総会トラブルと裁判
総会の決議に関する裁判の現状に関する説明
総会決議無効確認訴訟について- 手続不備による総会決議無効確認訴訟
手続要件の不備を争点とする総会決議無効確認訴訟に関する説明
招集手続・決議要件、特別の影響を受ける組合員の承諾について- 管理組合が被告となった場合の対応
管理組合宛に訴状が届いた場合の理事会の対応などに関する説明
- 総会トラブル防止のために
総会トラブル防止の3カ条に関する説明
総会トラブルと裁判
管理組合が裁判上で訴えられるケースは、「総会の決議に対するもの」と「規約の適用に関するもの」が圧倒的に多い現状にあります。
総会の決議に不満を持つ者は、総会の決議が無効であると主張するため、「総会決議無効確認訴訟」を提起します。
総会決議無効確認訴訟
総会の決議を無効であると主張する場合、次の2通りの方法があります。
- 決議の「内容」が不正だから決議は無効である(実体要件の不備)
- 総会の「手続」が不正だから決議は無効である(手続要件の不備)
「実体要件」については、管理組合毎に内容が異なりますので、当ページでは解説いたしません。
手続不備による総会決議無効確認訴訟
総会決議無効確認訴訟でよく争点となる「招集手続の欠訣」・「決議要件の不正」・「特別の影響を受ける組合員の承諾の欠訣」につき、そのトラブル防止法を確認しながら解説します。
招集手続の不正
招集手続に関するミスにより、決議が無効となる場合があります。「決議の内容」と「ミスの内容・程度」を勘案して、無効となるかを判断します。
無効とされた事例 | 新規約設定の総会招集通知に議題・議案の要領を記載せず…議題・議案の要領を欠く(東京地判S62.4.10) |
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規約改正の総会招集通知に議案の要領を「規約・規則改正の件(保険条項、近隣関連事項、総会条項、議決権条項、理事会条項)」と記載…議案の要領を欠く(東京高判H7.12.18) | |
有効とされた事例 | 規約改正の総会招集通知について、通知先の届け出のないマンション非居住組合員1名に対し、専有部分の所在地ではなく登記簿上住所に送り、不到達…大多数賛成、ミスは影響なし(東京地判S63.11.28) |
招集手続の形式的要件を満たすことで、トラブルが防げます。
決議要件の不正
決議要件に不正があった場合、決議は無効となります。
無効とされた事例 | 特定組合員への駐車場の専用使用権の設定について、規約に定めることなく普通決議により細則で定めた…共用部分等を特定人しか使用できない場合は「管理」を超え、細則制定の普通決議では足らず、規約制定の特別決議を行う必要がある(那覇地判H16.3.25) |
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総会準備段階において、決議事項・決議要件および必要な出席組合員数・議決権数をよく確認し、不明な点があればマンション管理士などの専門家に相談することが、トラブル防止につながります。
特別の影響を受ける組合員の承諾の欠訣
下記事項に関する決議をする場合は、特別の影響(不利益)を受ける一部の組合員の承諾が必要となり、承諾がなければ決議は無効です。
- 共用部分等に関する形状または効用の著しい変更を伴う変更
- 規約の制定・変更・廃止
「特別の影響」とは、上記決議事項の必要性・合理性と一部組合員が受ける不利益とを比較し、不利益が受任限度を超える場合をいいます。
必要とされた事例 | 屋上・外壁・敷地・駐車場の無償の専用使用権を消滅させる(東京高判H8.2.20・最判H10.11.20) |
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定住禁止のリゾートマンション(購入当初は定住禁止が規約上不明確)において、定住者に高額の管理費等の支払義務を課す(東京高判H21.9.24) | |
不要とされた事例 | 駐車場の専用使用権の使用料について増額する場合(最判H10.10.30) |
マンション不在の組合員に対し住民活動協力金を負担させる旨を規約に規定…管理組合運営業務の事実上の免除分相当額の金銭負担(管理費の約15%増)のみ、支払拒否者が少ない事情も考慮(最判H22.1.26) |
なお、特別の影響がある場合であっても、一部の組合員は「正当な理由」がなければ承諾を拒否することができません(標規47VI~VII・法6I勿論)。
総会準備段階で特別の影響の有無が判明しますので、受忍限度・正当理由などについて事前に専門家に相談することが、トラブル防止になります。
管理組合が被告となった場合の対応
訴状が管理組合宛に届いた場合、理事会を速やかに招集し、訴状の内容確認と今後の方針を決定します。
方針決定後、臨時総会を開催し、訴えの内容・理事会の方針・判決の効力・弁護士(司法書士)費用の概算などを報告して、訴訟追行および予算編成に関して承認を得ることになります。
訴訟中は、適宜、訴訟の経過を組合員に報告することが重要です。猜疑心から理事会に対する不信感を招きかねず、結果として、管理組合の運営に支障が出ることになりかねません。
総会トラブル防止のために
総会は日々の管理組合運営業務の集大成であり、日頃の執務姿勢が問われる場所でもあります。総会を滞りなく開催し、組合員全員の財産と日々の平穏を維持するため、次の3つの提案をいたします。
- 法令・規約に精通し、適正な管理組合の運営をすること
- 運営業務につき、日頃から法令・規約に照らし合わせ、疑問点は理事会で協議すれば、トラブル予防につながります。
- 健全なコミュニティーの形成活動に尽力すること
- 組合員同士で問題を共有し、実態にあった、より良い解決策を模索することができます。
- 総会への実出席率が増加することに繋がり、総会の決議内容に不満を示すものが少なくなります。
- マンション管理士などの専門家を活用すること
- マンション管理には、法律・建築・設備・会計などの専門知識が不可欠です。