通常総会の招集通知
イントロダクション
- 総会招集手続の概要
マンション管理組合の総会の招集通知に関する説明
議題を必ず通知することや、通知時期・通知場所について- 総会招集手続による発送書類・掲示書類
発送・掲示する招集通知書その他の書面に関する説明
招集通知書・収支決算書や収支予算書・委任状や議決権行使書- 総会招集手続の省略
招集通知を省略する方法と注意点に関する説明
総会招集手続の概要
総会では、原則として、あらかじめ通知された「議題」しか決議を行うことができないため、招集通知手続は非常に重要です。ただし、普通決議事項については、非通知議題でも決議できる旨を規約に定めることもできます。
このほか、招集通知には通知時期・通知場所に関する要件があります。
要件を欠く通知は無効となり、総会決議も無効となる可能性があります。「発送した事実」を後から証明できる方法で通知することを推奨します。
Ex. 宅配便(発送日・宛先が記載された控書が発行される)
通知時期
総会招集の通知は、法令上少なくとも総会1週間前に発しなければならないとされていますが(法35I)、規約で伸縮でき、マンション標準管理規約によれば、少なくとも2週間前に発することになっています(標規43I)。
「2週間前」とは、通知を発した日の翌日から起算して会日までの間に2週間の日数をおくことを意味します(大判S10.7.15類推)。
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|
- | - | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
- 19日に総会を開催する場合、少なくとも4日までに通知を発する
より多くの熟慮期間を設けたり、委任状・議決権行使書の返送日数を考慮して、2週間に伸張されています。
通知場所
招集通知は、次のとおり「発送」または「掲示」する必要があります。
- 通知先の届け出がある場合…届出先に発送
- 通知先の届け出がない場合…専有部分の所在地に発送
- マンション居住者または届け出なし…上記に代え所定箇所に掲示も可
通知先の届け出 | 有 | 無 |
---|---|---|
マンション居住の組合員 | 届出先に発送 所定箇所に掲示 | 専有部分に発送 所定箇所に掲示 |
マンション非居住の組合員 | 届出先に発送 | 専有部分に発送 所定箇所に掲示 |
「掲示」は費用が掛かりませんが、出席者増加や議決権の代理行使・書面行使の促進を期待できません。招集通知書の発送は必ず行いましょう。
発送と併せて、掲示は必ず行いましょう。同居人・賃借人などの占有者が総会上の意見陳述権を有する場合があり、この場合は組合員への通知後に遅滞なく「日時・場所・議題」を掲示する義務があります(法44I)。
掲示を忘れて意見陳述の機会を奪った場合は、決議の効力を占有者に主張できない事態もありえます(ただし、これが原因で決議が無効となることはないと解されています)。
総会招集手続による発送書類・掲示書類
1.招集通知書
「日時・場所・議題」は必ず記載します。
- 「議案の要領」の通知が必要な議題については、必ず記載します。
- 議題を効率よく消化できる順序を考え、必要であれば判断資料(修繕計画書など)の作成・添付をしましょう。
「議案の要領」とは、事前に賛否の検討ができる程度に議題の具体的内容を明らかにしたものをいいます。
普通決議事項のように議案の要領を記載する義務がない場合であっても、欠席予定者の議決権の代理行使・書面行使を促すために、明記することが望ましい対応といえます(標指コメ1I三)。
2.収支決算書・収支予算書など
組合員に事前検討する機会を与えるために、収支決算書・収支予算書・事業報告書・事業計画書などを招集通知に同封することが推奨されます。
招集通知に収支決算書・収支予算書を同封するのは、99%以上の管理組合で実施されています(H17維持管理状況調査)。
3.委任状・議決権行使書
組合員が総会に欠席する場合でも、次の方法により議決権を行使できます。
- 代理人により議決権を行使する方法
- 書面により議決権を行使する方法
代理人による議決権行使と書面による議決権行使の違いは次のとおりです。
- 代理人による議決権行使
「代理人」が議題について判断・意思決定を行い、議決権を行使
- 書面による議決権行使
「組合員」が議題について判断・意思決定を行い、議決権を行使
規約により、代理人の受任資格を限定することもできます。
上記の場合、組合員の立場から利害関係が一致すると考えられる者に限定することが望ましい対応となります(標規コメ46IV)。また、代理人欠格事由として、暴力団員などを定めておくことも考えられます(同)。
総会欠席予定者に議決権行使を促すため、委任状・議決権行使書を同封することが一般的です。
いわゆる「白紙委任(代理人の記載がない場合は議長などに一任の旨)」は、次のような問題があります。
- 委任者の意思と逆のことが決められてしまうことがある
- 総会が形骸化し、自浄作用が働かず、不正を見逃すおそれがある
マンション標準管理規約コメントでは「白紙委任は無効」とし、「議決権行使書による賛否の記載を要する」旨を委任状に記載するよう促します。しかし、これでは大量の死票が発生し、決議できない危険もあります。
現実的な解決策としては、白紙委任を定める場合でも、それを最終手段と考え、総会当日までに白紙委任状を提出した組合員に意思確認および補正を徹底して求めること、が良いと思われます。
総会招集手続の省略
組合員全員の同意により招集手続を省略して総会を開催できます(法36)。
組合員全員の同意により招集手続が省略された場合は、決議事項が議題に限定されませんが、少なくとも議題を特定して同意を得るべきです。