通常総会の開催準備
イントロダクション
- 事前準備の進め方
事前準備の意義と進め方に関する説明
開始時期・合理的な順序・役員改選がある場合について- 開催日時・会場の決定と早期予告
開催日時・会場の決定方法に関する説明
早期予告について- 報告事項の整理・監事による監査
報告事項の整理方法に関する説明
理事会の業務と監事の業務について- 決議事項の整理・検討
決議事項の整理・検討方法に関する説明
- 事前説明会・事前アンケート
重要案件についての事前説明会・事前アンケートに関する説明
事前準備の進め方
総会を無事に乗り切るには、問題点を事前にすべて洗い出し、しっかり対策をとる必要があります。したがって、事前準備が一番重要といえます。
事前準備開始
事業年度が残り2カ月を切った頃には、当期収支決算・当期事業結果が概ね把握できるかと思います。通常案件であれば、その頃から準備を進めておくとよいでしょう。
管理会社に会計業務を委託している場合、管理会社に収支予算案の素案を作成してもらい、理事会に提出してもらいます。
ここで注意すべきは、収支予算案の素案の「提出時期」です。マンション標準管理委託契約書によれば、「事業年度開始の○月前まで」に提出することとしています(標委3一・別1I一i)。
「事業年度開始後○月以内に提出する」などと契約変更されている場合、理事会のチェック時間を削るという管理会社の意図が垣間見えます。素案に余計な出費を計上するなどの不審な点がないか十分注意するとともに、事業年度開始前に素案の提出を求めて対応を見るのもよいでしょう。
事前準備の合理的な順序
合理的な視点から、次の順番で総会の準備をすることが良いと思われます。当ページでは、この順序に従って解説していきます。
規約変更や建替・大規模修繕工事などの重要案件については、1年単位で準備を進める場合が多いので、上記の順番にこだわる必要はありません。
役員の改選予定がある場合
マンション管理に中断はないので、理事に就任したその日から管理組合業務が発生することもあります。したがって、役員の全員(または一部)が改選する予定の場合、次のような引継処理を行います(標指コメ1II六)。
- 総会前に次期役員候補者の就任内諾を得る
- 懸案事項・未処理事項の伝達
- 組合員の要望・苦情の伝達
- 管理会社との調整事項の伝達
- 帳票類・書類の内容・一覧・保管場所の伝達
- 理事としての経験の伝達
- 文書化されていない運営ルールの伝達
- 未経験者であれば参考のため理事会に出席してもらう など
開催日時・会場の決定と早期予告
組合員が出席しやすい日時・場所に配慮し、出席見込者数を考慮しながら、総会開催日時と会場を決定します。
議決権の代理行使・書面行使も含めた総会出席率は、平均80.3%です。一方、組合員の実出席率は平均34.1%と低く、さらに築年数が長くなるほど低下傾向にあります(H20総合調査)。
本来、決議は質疑・意見交換などを踏まえるべきであり、総会の成立要件も考慮すると実出席率50%以上が望ましいとされます(標指コメ1I六)。
総会開催の早期予告
組合員にスケジュールを確保してもらうために、総会日時・会場の場所などを事前に予告することが推奨されています(標指コメ1I四)。
予告方法について法令・マンション標準管理規約に定めはないので、掲示・広報紙掲載・電子メール配信など、組合の実情に応じて合理的に行います。
早期予告は86.4%の組合で実施されています(H17維持管理状況調査)。
報告事項の整理・監事による監査
総会当日は、理事長または担当理事が前会計年度の業務執行・会計について報告し、監事が監査報告をします。組合員からの質疑応答が行われた後に、各報告事項が決議により承認されます。
理事会の業務
理事会は、組合員が執行状態をチェックできる報告書となるよう作成すると同時に、質疑を予想して応答内容を考えます。
- 請求書・領収書・預金通帳などの証憑を精査して、収支決算書(収支報告書・貸借対照表)を作成します。
- 工事業者の報告書などの証憑を精査して、事業報告書を作成します。
例年どおりでない項目は質疑が予想されますので、応答内容をしっかりと考えておきます。
監事の業務
監事は、作成された収支決算書・事業報告書および証愚を基にして、監査を実行します。監査終了後、監査報告書を作成します。
決議事項の整理・検討
総会当日、理事長または担当理事が、新会計年度の単年度事業計画(案)・単年度収支予算(案)・その他の決議事項案を上程して説明します。組合員からの質疑応答後、決議により承認されます。
- 収支決算書・事業報告書を確認します。
- 設備・備品の現状確認後、組合運営方針(備品購入・修繕実施など)を協議します。
- 組合員からの要望について検討します。
- 決議要件を確認・検討します。
- 普通決議事項か特別決議事項か
- 特別の影響を受ける組合員の承諾は必要か
- 弁明の機会の付与は必要か
- 占有者に意見陳述権はあるか
- 一部共用部分に関する決議であるか など
上記項目などの検討後、収支予算案・事業計画案・その他決議事項案を作成すると同時に、質疑を予想して応答内容を考えておきます。
必要に応じて、設備点検業者・管理会社・マンション管理士などから意見を聴取します。
事前説明会・事前アンケート
規約変更や建替・大規模修繕工事などの重要案件は十分な議論が尽くされることが必要であるため、事前説明会や事前アンケートを実施することが推奨されています(標指コメ1I五)。
その方法について法令・マンション標準管理規約に定めはないので、組合の実情に応じて合理的に行います。
これらの結果を踏まえ、決議事項の内容に反映させます。
事前説明会や事前アンケートを行うことで、総会上の無駄な質疑を避け、熟考による適切な判断を期待できます。