不動産贈与に関する税金

イントロダクション

不動産贈与に関する税金の概要

受贈者に課税される税金に関する説明

贈与税の基礎知識

贈与税の計算式に関する説明

贈与税の節税知識

贈与税の控除・特例措置利用による節税方法に関する説明
基礎控除・相続時精算課税・住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の特例措置・配偶者控除・農地等の納税猶予について

法人への贈与・法人からの贈与

法人が贈与当事者となる場合の課税関係に関する説明

登記申請のご依頼・ご相談

不動産に関する権利登記のご依頼・ご相談につきましては、当コンテンツの登記申請のご依頼・ご相談をご覧下さい。

不動産贈与に関する税金の概要

不動産の贈与を受ける場合、次表のとおり様々な税金が課されます。

不動産受贈者に課税される税金
課税理由税目
不動産取得贈与税(個人から個人が贈与を受けた場合)
所得税・住民税(法人から個人が贈与を受けた場合)
法人税・法人住民税・事業税(法人が贈与を受けた場合)
印紙税(1通200円)
不動産取得税
登録免許税
不動産保有固定資産税
都市計画税

贈与者に対しては、個人間の贈与であれば、原則として課税されません。

当ページについて

当ページでは、個人間の贈与の場合に課税される贈与税について、贈与税の基礎知識贈与税の節税知識の2テーマに分割して解説します。また、法人が贈与契約の当事者となる場合の課税関係につき、法人への贈与・法人からの贈与で解説します。

贈与税の基礎知識

個人間で贈与を行った場合、受贈者に対して贈与税が課税されます。

贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間の受贈財産総額を基に、一般贈与財産か特例贈与財産かに応じて、下記のとおり計算します。なお、贈与不動産の評価額は、路線価で算出するのが原則です。

  • 贈与税=(受贈財産総額-110万円)×下記税率-下記控除額
一般贈与財産

特例贈与財産に該当しない贈与財産

特例贈与財産

直系尊属(父母や祖父母など)から受ける贈与財産
(受贈者は贈与年の1月1日において20歳以上の者に限る)

特例贈与財産に関する優遇措置により、生前贈与の活用が期待されています。

一般贈与財産に関する贈与税

一般贈与財産に関する贈与税速算表
基礎控除額差し引き後の残余額税率控除額
200万円以下10%-
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

例えば、評価額1,000万円の土地を贈与した場合、受贈者が支払う贈与税は次のとおりです(受贈者は他に贈与を受けていないものとします)。

(1000万円-110万円)×40%-125万円=231万円

特例贈与財産に関する贈与税

特例贈与財産に関する贈与税速算表
基礎控除額差し引き後の残余額税率控除額
200万円以下10%-
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

例えば、1,000万円の現金を祖父から22歳の孫に贈与した場合、孫が支払う贈与税は次のとおりです(孫は他に贈与を受けていないものとします)。

(1000万円-110万円)×30%-90万円=177万円

一般贈与財産と特例贈与財産の双方を取得した場合

一般贈与財産と特例贈与財産の双方を取得した場合、基礎控除後の課税価格を各財産の割合に按分して贈与税額を算出します。

一般贈与財産200万円と特例贈与財産300万円(合計500万円)を取得した場合

  1. 基礎控除後の課税価格=500万円-110万円=390万円
  2. 一般贈与財産に対応する金額
    (390万円×20%-25万円)×(200万円/500万円)=211,000円
  3. 特例贈与財産に対応する金額
    (390万円×15%-10万円)×(300万円/500万円)=291,000円
  4. 上記2.3.より
    211,000円 + 291,000円 = 502,000円

贈与税の節税知識

贈与税の趣旨は、生前贈与による相続税逃れを防止することにあり、相続税より高い税率が設定されています。他方、基礎控除や特例措置を活用して、効果的に贈与税・相続税を節税しながら不動産を贈与することもできます。

贈与税の基礎控除・特例措置の概要

贈与税の基礎控除・特例措置は次表のとおりです。

贈与税の基礎控除・特例措置のまとめ
制度名各制度の控除額・摘要
贈与税の基礎控除制度1年につき110万円
※連年贈与に注意
相続時精算課税制度最大2,500万円控除後、20%課税
※贈与者死亡により相続税課税対象
住宅取得等資金の贈与に
係る贈与税の特例措置
最大1,200万円控除
※基礎控除または相続時精算課税と併用可能
贈与税の配偶者控除制度2,000万円(基礎控除併用で2,110万円)
※同一配偶者からの贈与については1度のみ
農地等の納税猶予制度納税猶予
※贈与者死亡により相続税課税対象

基礎控除制度の活用

贈与税には基礎控除1年につき110万円)があり、基礎控除額を超える財産部分に課税されます。つまり、基礎控除額以下の財産であれば無税で贈与できます。

不動産であれば、基礎控除額内の共有持分を贈与することになります。

たとえば、時価3,960万円の土地を無税で贈与する場合は、受贈者1人あたり共有持分36分の1を贈与します。子3人・妻に36分の1づつ贈与すれば、年間440万円を無税で贈与できます。

基礎控除額内の贈与を毎年毎年すればよい、と考えるのは早計です。連年贈与は「一つの贈与」と認定され、高額の贈与税が課税される危険もあります。各年の贈与が独立していることを立証できるよう、準備しておくことが重要です。

相続時精算課税制度の活用

60歳以上の贈与者から20歳以上の推定相続人・孫に贈与する場合、贈与税の負担を大幅に減少できる代わりに、相続時に贈与財産と相続財産の合計額に相続税を課税して精算する、という相続時精算課税制度があります。

この制度を利用することにより、複数年にわたって最大2,500万円まで控除でき、2,500万円分以降の贈与に関する贈与税率も20%に固定されます。

相続時精算課税制度を利用すると、以後の同一当事者間の贈与の際に、贈与税の基礎控除制度が利用できませんのでご注意ください。

贈与財産と相続財産の合計額が相続税の基礎控除額を超える場合や、贈与財産が確実に値下がりする場合などは、逆効果となることもあります。当制度の利用に際し、充分に検討する必要があります。

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の特例措置の活用

20歳以上の直系卑属(子・孫など)に、居住用住宅の新築・取得等のための金銭(住宅取得等資金)を贈与する場合、贈与額から一定額を控除できる制度です。

当制度は、基礎控除制度または相続時精算課税制度と併用することができます。

控除額は、次表のとおりです。

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の特例措置の控除額(消費税等の税率8%)
新築等に係る契約の締結日省エネ等基準に適合する住宅左記以外の住宅
~平成27年12月31日1,500万円700万円
平成28年1月1日~
令和2年3月31日
1,200万円700万円
令和2年4月1日~
令和3年3月31日
1,000万円500万円
令和3年4月1日~
令和3年12月31日
800万円300万円
住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の特例措置の控除額(消費税等の税率10%)
新築等に係る契約の締結日省エネ等基準に適合する住宅左記以外の住宅
平成31年4月1日~
令和2年3月31日
3,000万円2,500万円
令和2年4月1日~
令和3年3月31日
1,500万円1,000万円
令和3年4月1日~
令和3年12月31日
1,200万円700万円

平成31年4月1日以降は、新築等に係る契約の締結日に消費税等の税率が10%であれば、控除額が多くなります。

この特例が適用されるための主な要件は、次のとおりです。

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の特例措置の適用要件




  • 受贈者が直系卑属(子・孫など)であること
  • 贈与年の1月1日において、受贈者が20歳以上であること
  • 贈与年の受贈者の年間所得が2,000万円以下であること
  • 原則として、平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと
  • 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人(特別関係者)から居住用住宅の取得をしたものではないこと
  • 特別関係者との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと
  • 贈与年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて家屋の新築・取得等をし、その家屋に受贈者が居住すること(居住することが確実であると見込まれること)
  • 受贈者が次のいずれかに該当するものであること
    • 贈与時に日本国内に住所がある
    • 日本国籍を有し、贈与前5年以内に日本国内に住所があった



  • 住宅の床面積が50m2以上240m2以下で、床面積の50%以上が受贈者の居住用であること
  • マンションの場合、耐火建築物または準耐火建築物であること
  • 使用されたことのある家屋の取得については次のいずれかに該当すること
    1. 耐火建築物の場合、築25年以内
    2. 耐火建築物以外の場合、築20年以内
    3. 上記年数を超える場合、現行耐震基準に適合(証明書必要)
    4. 上記1.2.3に該当しない場合、住宅用の家屋の取得の日までに同日以後その住宅用の家屋の耐震改修を行うことにつき、一定の申請書等に基づいて都道府県知事などに申請をし、かつ、贈与を受けた翌年3月15日までにその耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったもの(証明書等必要)

配偶者控除制度の活用

婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産(またはその取得資金)の贈与がされた場合、贈与額から2,000万円(基礎控除と併用で2,110万円)まで控除できるという制度があります。

この特例が適用される主な要件は、次のとおりです。

  • 婚姻期間が20年以上であること
  • 贈与財産が国内の居住用不動産(またはその取得資金)であること
  • 贈与した年の翌年3月15日までに、贈与不動産(または贈与資金による取得不動産)に受贈者が居住し、その後も継続居住する見込みであること

同一配偶者からの贈与については、一度しか適用を受けられません。

農地等の納税猶予制度の活用

営農者が農地等を農業後継者(推定相続人)の1人に贈与した場合、贈与を受けた農地等について受贈者が農業を営んでいる限り、贈与税の納税が猶予されます。

贈与当事者の死亡により、贈与税が免除されます。

贈与者が死亡した場合、贈与地を相続したものとみなされて相続税の課税対象となります。

法人への贈与・法人からの贈与

個人に限らず、法人であっても贈与契約の当事者となることができますが、個人間の贈与の場合と取り扱いが異なりますので、注意が必要です。

法人への贈与または法人からの贈与の場合、受贈者・贈与者双方に対して、法人に法人税・法人住民税・事業税(法人税等)が、個人に所得税・住民税(所得税等)が課税されます。なお、同族会社が受贈者となる場合は、その株主に贈与税が課税されます。

法人への贈与・法人からの贈与の課税関係の概要
法人と贈与受贈者
個人A法人A
贈与者個人B個人A:贈与税
個人B:非課税
法人A:法人税等(注1)
A株主:贈与税 (注2)
個人B:所得税等(注3)
法人B個人A:所得税等(注4)
法人B:法人税等(注5)
法人A:法人税等(注1)
A株主:贈与税 (注2)
法人B:法人税等(注5)
  1. 受贈益に対し課税されます。
  2. 同族会社の場合、株主が株式価額増加分の受贈者とみなされます。
  3. 時価と取得費・譲渡費用の差額分が譲渡益とみなされます。
    • 譲渡所得として課税されます。
    • 国・地方公共団体・公益法人等への寄付の場合は非課税です。
  4. 雇用関係の有無により給与所得または一時所得として課税されます。
  5. 時価と取得費・譲渡費用の差額分が売却益とみなされます。

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