個人民事再生(個人再生)
イントロダクション
- 個人再生の概要
大幅に債務を減額する個人再生手続に関する説明
個人再生の選択基準について- 個人再生の利用条件
個人再生の種類と利用条件に関する説明
小規模個人再生手続・給与所得者等再生手続について- 個人再生のデメリット
個人再生のメリット・デメリットについて
- 最低弁済額の算定
最低弁済額の算定方法に関する説明
3つの基準(最低弁済基準・清算価値・可処分所得)について- 住宅ローン特例
住宅を手放さずに再生手続ができる住宅ローン特例の説明
住宅ローン特例の利用条件について
個人民事再生(個人再生)のご依頼・ご相談
個人民事再生(個人再生)のご依頼・ご相談は、当コンテンツの債務整理のご依頼・ご相談をご覧下さい。
個人再生の概要
「個人民事再生(個人再生)」は、支払不能となる可能性が非常に高い場合や、事業の継続に著しい支障を来たすことなく弁済期にある債務を弁済できない場合に、残存債務を大幅にカットしたうえで、原則3年間の分割払いにする手続です。地方裁判所へ再生手続開始の申立後、再生計画案を提出し、その認可を受ける必要があります。
個人再生手続では「住宅資金特別条項(住宅ローン特例)」を利用し、住宅を手放すことなく住宅ローン以外の債務を大幅に減額できます。
個人再生の選択基準
債務者が支払不能の場合、自己破産を選択することがベストです。しかし、自己所有の居住用不動産を手放したくないなど、自己破産をすることに支障がある場合には、個人再生の利用を考えることになります。詳細については、破産(自己破産) - 自己破産か個人再生かをご覧下さい。
個人再生の利用条件
個人再生の種類
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があり、各人の個別具体的な事情を考慮した上で選択する必要があります。
小規模個人再生は、継続的または反復して収入がある個人(個人事業主や、サラリーマン・公務員などの給与所得者)を対象とした個人再生手続です(民再221~238)。個人再生の原則的な形態といえます。
給与所得者等再生は、サラリーマン・公務員などの給与所得者等専用の個人再生手続です(民再239~245)。小規模個人再生より利用条件が厳しく、手続も煩雑ですが、再生計画案に対して債権者の同意が不要である点が、最大の利点です(民再240)。ただし、小規模個人再生を選択した場合よりも返済額が多くなることがあり、この点がデメリットといえます。
比較対象 | 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 |
---|---|---|
個人事業主の手続利用 | 可能 | 不可能 |
再生計画案への一定数の債権者の同意 | 必要 | 不要 |
再生計画による返済額 | 少ない | 多い |
実際は、給与所得者等再生を利用できる場合であっても小規模個人再生を利用することが多いようです。債権者が再生計画案に異議を述べることが少ないからです。
小規模個人再生の利用条件
小規模個人再生の利用は、次の条件を満たす必要があります(民再221)。
- 個人(自然人)であること
- 会社などの法人は、個人再生を利用できません。
- 将来において、継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること
- 収入のない方(無職の方など)は利用できません。
- 住宅ローンなどを除いた残存債務総額が5,000万円以下であること
- 残存債務総額の計算にあたって、住宅ローンのほか、別除権行使による回収見込額および罰金などの額を除きます。
- 別除権(べつじょけん)
再生手続によらず、担保物を処分して債権回収できる権利です(民再53)。たとえば、借金を担保するために腕時計に設定した質権などが該当します。別除権行使による回収部分は、再生手続で減額されません。回収不能部分については、再生手続の対象となり減額されます。
給与所得者等再生の利用条件
給与所得者等再生を利用する場合、上記小規模個人再生の利用条件に加えて、下記の条件を満たす必要があります(民再239V)。
- 給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、その額の変動の幅が小さいと見込まれること
- 過去7年以内に、破産して免責を受けていないこと
- 過去7年以内に、給与所得者等再生の認可を受けていないこと など
個人再生のデメリット
メリット |
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デメリット |
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個人再生は、再生手続の開始申立後も再生計画案を作成・提出する必要があるなど、他の債務整理方法に比べて手続が煩雑で、申立てから再生計画の認可を受けるまで、6~8ヶ月かかります。また、個人再生委員が選任される場合には、申立費用とは別に個人再生委員への報酬(10万円~)を支払う必要があります。これらがデメリットといえます。
個人再生委員は、財産・収入状況の調査や再生計画案作成につき助言・勧告をするなどが主な役割です(民再223・244)。個人再生委員が選任されるかどうかは、各裁判所により異なります。
最低弁済額の算定
再生債務者は、「最低弁済額」以上を、原則3年間(特別な事情がある場合は5年まで延長可)の分割払いで返済していかなければいけません。
最低弁済額は、次の各条件による算出額の最も高いものとなります。
- 残存債務を基準に算出される「最低弁済基準」
- 所有財産を処分した場合に見込まれる「清算価値」
- 収入を基準に算出される「可処分所得」(給与所得者等再生のみ)
例えば、小規模個人再生を利用する場合において、最低弁済基準が「100万円」、清算価値が「80万円」となったときには、最低弁済額は「100万円」となります。3年間の分割払いで計算すると、1ヶ月あたり最低でも27,778円を返済することになります。
1. 最低弁済基準
最低弁済基準は、「住宅ローンなどを除いた残存債務総額」を基に、下記表のとおり算出します(民再231II)。「住宅ローンなどを除いた残存債務総額」の算出方法は、小規模個人再生の利用条件をご覧下さい。
住宅ローンなどを除いた残存債務総額 (X) | 最低弁済基準 |
---|---|
X<100万円 | X |
100万円≦X≦500万円 | 100万円 |
500万円<X≦1,500万円 | 0.2X |
1,500万円<X≦3,000万円 | 300万円 |
3,000万円<X≦5,000万円 | 0.1X |
2. 清算価値
「清算価値」とは、仮に破産手続により債務者の全財産を換価した場合に、債権者に配当できると予想される金額のことです。個人再生は、自己破産と同程度に債権者に負担を強いる手続です。したがって、破産手続による予想配当金以上の最低弁済額が再生手続上保障されます(民再25二・174II四・238・241II二)。
清算価値の算定方法は、所有財産の種類別に、詳細に設定されています。詳しくは、司法書士・弁護士などの専門家にご相談下さい。
相続した不動産や見込退職金などの高額な財産を所有する場合は、清算価値による算出額が高くなり、個人再生が困難になることもあります。
3. 可処分所得(給与所得者等再生のみ)
可処分所得は、給与所得者等再生の場合のみの条件です(民再241II七)。
可処分所得は、「債務者の年収から税金・必要経費などを控除した額」です。可処分所得の2年分以上が、最低弁済額として保障されます。必要経費などの算出方法は法定されており、扶養家族数や居住地などにより異なってきます。詳しくは、司法書士・弁護士などの専門家にご相談下さい。
給与所得者等再生を利用する場合は、この可処分所得要件により、小規模個人再生の場合よりも返済額が多くなる傾向があります。
その他
債務の種類によっては、最低弁済額の算定と返済につき、罰金などの額や非免責債権など、特別に取り扱われるものがあります。詳細については、司法書士・弁護士などの専門家にご相談下さい。
住宅ローン特例
個人再生(小規模個人再生・給与所得者等再生)は、「住宅ローン特例」を利用し、住宅を手放すことなく(住宅ローン以外の)債務を減額できます(民再196~206)。
住宅ローン特例を利用する場合の注意点は、住宅ローンは減額されず、当初の契約どおり返済していくことが原則となることです。
住宅ローン特例の利用条件
住宅ローン特例を利用するには、主に次の条件があります(民再196・198)。
- 住宅・敷地に住宅ローンについての抵当権が設定されていること
- 「住宅」とは、再生債務者個人が所有・居住する床面積の2分の1以上が居住専用の建物です。住宅が2つ以上ある場合、主として居住する1つの建物のみが、特例適用の対象となります。
- 「住宅ローン」とは、住宅の建設・購入・改良又は敷地の購入に必要な資金についてのローンのことです。
- 住宅ローンまたは住宅ローンについての保証会社の求償債権を担保するために、住宅・敷地に抵当権が設定されていることが条件です。
- 住宅・敷地に、住宅ローン以外についての担保権(抵当権など)が設定されていないこと
- 住宅ローン特例は、「住宅ローン以外の債務」について、特例を定めることができません。
- 住宅ローン以外の債務について、住宅・敷地に担保権が設定されている場合、担保権者は、別除権の行使として抵当権を実行して住宅・敷地を競売することができるので、特例を認める意味がないからです。
住宅ローン特例の利用条件は上記以外にも存在します。詳細については、司法書士・弁護士などの専門家にご相談下さい。